ウルセラドライの開発経緯
【 ウルセドライの開発経緯 】
美容外科形成外科川崎中央クリニック院長の南部です。
今回は最近ウルセラドライの治療について批判的な記事が散見されるので、
ウルセラドライの開発経緯と治療の詳細について話したいと思います。
最初に理解していただきたいことは、ウルセラドライは顔面用に開発されたウルセラに代表される高密度焦点式超音波治療器(HIFU)を
単に脇に照射する治療方法でないということです。
顔面のたるみの設定と、わきが・多汗症の治療の設定では、治療の深さが違いますし、顔面の設定では出力が弱すぎます。
特に真皮の裏側にミカンの粒のようにびっしりとあるアポクリン腺は顔面の設定ではなかなか破壊できません。
ウルセラドライの治療法については2013年に日本形成外科学会総会で発表(発表スライドを最後に一部掲載しています。)していますが、論文にはしていません。
論文で発表していないのは、この治療方法はコツがかなり必要なため、文字ではやり方が伝わらず、
他の医師がやり方を真似して大きな合併症が起きたり、治療効果がない方法が広まってしまうことが危惧されたからです。
私以外にウルセラドライを行っているのは私のもとで数百例以上この治療を経験した、
後輩で札幌中央クリニック院長の岡橋先生のみです。
ウルセラドライを開発するまでは切らないわきが・多汗症治療は古くからおこなわれている電気凝固法などを除くとミラドライくらしかありませんでした。
そんな時期にウルセラの会社からアメリカでわきが・多汗症治療として行っているプロトコールを試して欲しいと頼まれました。
しかも、それを学会で発表して欲しいとのことでした。
私はミラドライを導入しようかと迷っていた時でしたので、ウルセラを脇の治療として使えるなら面白いなくらいの軽い気持ちで快諾しました。
しかし、それはいばらの道への始まりでした。
当初のプロトコールでは片方の脇に1.5mmと3.0mmのカートリッジを用いて600発から900発照射するというものでした。
ただ、この照射数を広く一般の患者さんに行うというのは現実には難しいものがありました。
しかも、このプロコールでもなかなか満足の行く結果が得られませんでした。
通常であればこのプロトコールは通用しないので多汗症の治療に向かないということで終わりでしょうが、
私は学会発表を前提にこの治験をやることにしたので何とか結果を出さないといけない状態でした。
そこで、何とかウルセラを用いて、エクリン腺・アポクリン腺を破壊できないかと実験の日々が始まりました。
大学院にいたときはネズミ相手に実験を行う毎日でいたので、色々な実験を行うのは慣れているほうでしたが、
今回はなんとか学会発表レベルの結果を出さないといけないため必死でした。
マグロの赤身や豚肉、時にはボランティアを募って皮膚への照射をし、どうしたらエクリン腺・アポクリン腺を効率的に破壊できるか色々な方法を試しました。
照射した皮膚は自分で大学の研究室に持って行き病理標本を作成、観察しました。
試行錯誤を繰り返しやっとのことで納得いく効率的な照射方法を考えました。
照射方法がある程度決まってからも大変でした。
切らないわきが・多汗症は皮膚をできる限り傷つけないで、エクリン腺・アポクリン腺を破壊する治療です。
皮膚は損傷しても再生しますが、エクリン腺・アポクリン腺は損傷したら再生しないため、この再生力の違いを考えて治療を行わないといけません。
顔面の設定ではエクリン腺・アポクリン腺を破壊するには熱が十分に伝わらないため、
わきが・多汗症の治療をするにはエクリン腺・アポクリン腺を破壊するのに十分な熱を与えなければなりません。
やっとのことでエクリン腺・アポクリン腺を破壊する十分な熱を加えるのに成功しました。
しかし、その結果、皮膚のやけどという合併症が起きる可能性が出てしまいました。
最悪の場合エクリン腺・アポクリン腺を破壊するだけでなく真皮の深い層までやけどを起こしてしまします。
それを何とか照射の工夫でやけどが起きないように考案されたのがウルセラドライです。
ウルセラドライが確立してからやっとのことで数十例施術を行い、学会発表を行うことができました。
このような経緯で開発したウルセラドライですので、他の先生が単に脇にウルセラなどのHIFUを照射してもなかなか良い結果がでないため、
中にはこの治療は効果がないと批判される先生方がいらっしゃるのだと思います。
また、この治療は脇という立体面を超音波の点で治療する方法なためどうしても一回の治療で効果を実感されない方もいました。
しかしながら、ウルセラドライを施術してから6年以上、数にして4000例以上施術してきて、
術後の患者さんを診察する限りは、ウルセラドライを十分理解している医師が行えば有用な治療方法だと思っています。